悪いことばかりではない米国の税金申告

日本で就職したことはありませんが、大昔にアルバイトをしてまとまったお金をいただいたことがありました。その時は10%の源泉徴収がされていました(いただいたお金は、英語の本や教科書に 全部使ってしまいました)。

アメリカに来た当初、頭を悩ませていたのはソーシャルセキュリティー番号取得でした。この番号がなければまともな社会生活が送れないからです。ソーシャルセキュリティー番号は、時代とともに変わって現在は、税金番号と言われたりしています。この番号は、生まれた時から持っていて家族の一員として税金還付などにも必要になります。

さて、今回税金について書こうと思ったのは、次のようなことが起きたからです。

アメリカで仕事をしていると(アメリカじゃなくてもそうですが)、必ず税金申告をする必要があります。

何年か前にソーシャルセキュリティー事務所から来た書類には、わたしが渡米したばかりのころのソーシャルセキュリティー(年金用税金)が支払われていること記載されていました。これを見た時は、「あぁ、当時は税金申告していなかった」と思い出しました。

ある友人のお母さんは長いこと働いたのに 会社が年金税を支払っていなくて65歳になった時にとても小さな年金しかもらえなかった、という友人のお母さんがいたり、現金支給が多くて、年金税どころかW-2に記載されている収入が少なすぎて奥さんを日本から呼び寄せられない寿司職人がいたりします。いざ年金が支払われる前に慌てないように、人任せ・会社任せではなく、できるだけ早い段階で天引きされた税金が正しいかどうか、把握している必要があります。

大事なことは、専門家に聞くのがよいかと思いますが、そこで、ちょっと考えたことを書きます。税金申告をすると得になるかもしれないお話です(アメリカで専門家に聞くと、時間料金はチャージされます。特に弁護士などは、時間で料金発生が起きますから、相談に行く時は、必ず初回料金を聞くことをお勧めします)。

アメリカの税金申告は、公認会計士を使わなければならない理由はありません。自分で税金申告をすることもできます。証券や家のローンがなく、収入が1社からでW-2という1年間の収入と税金を納めた明細書がある、というような場合は、自分でも簡単に申告ができます。

ここで、いくつか重要なことがあります。

 

(1)

W-2の書類は、年間の収入に対して税金の先払いを会社が行っているのが判る明細書です。この明細書には、連邦税、州税、市税、ソーシャルセキュリティー(年金)税、などが本人に代わって企業が先に支払いをしている内容です。この税額が妥当かどうか調べたことがありますか? 就職時にW-9という書類に、既婚か独身か、税金をどのくらい納めてほしいかを書類に書き込みます。

もう一つは、ちょっと複雑なのですが、会社と自宅が別々の州にある場合は、州や市税の税率が違っていることがあります。すでに多くの企業がオンラインや給料明細ソフトを使っていますが、時には間違えて多くの税金が引かれていた場合は、税金申告をして返却してもらわないと損になります。

 

(2)

税金には最低限の収入が保証されています。独身の収入に対しては、年間12,400ドルが保護されています(政権が変わると数字が変わることがあります)。例えば50,000ドルの収入があった場合は、38,600ドルの収入に対しての税金支払いなので、収入が小さくなり税金調節で申告すれば税金が戻ってきます。

 

(3)

それから、IRAと言う制度があります。401Kの制度がない会社に入っている場合は、このIRAという制度を使って、申告時の収入を低くして税金を支払うことができます。そして、このIRAは国に支払のではなく、本人の貯蓄になります(401Kについては、少々複雑ですが、将来大変お得になります)。

 

(4)

税金還付金は、銀行口座へ直接入金されます。現在、申告後21日間ほどで税金を返しますと連邦税務局からメモが出ています。以前は風まかせな感じがありました。それから、入金がない場合は問い合わせる方法も用意されています。

 

(5)

もう一つ重要なことは、今回のコロナ救済金も税金申告をしていることで受けられる制度です。国民だけではなく税金を支払っている人すべでが対象です。ですから国籍には関係ありません。

 

(6)

失業保険制度も知っているとよいかと思います。失業保険は基本26週間支払ってくれます。コロナの様な特別な時などはもっと長くなります。申請はOnlineでできます。会社が倒産やいろいろな理由で一時的に仕事を失うことがあります。次の仕事が見つかるまでの補助は大変助かります。失業保険は、企業が加入しています。

 

(7)

聞いた話で恐縮です(本当のところは定かではありません)、が、企業がソーシャルセキュリティーへの税金を怠っていて、66歳になった時に調べたら、とても少ない年金、または、ほぼ入っていなかった、なんてことがあった、ということです。そんなことがないように、自分の収入が毎年わかる方法がありますのでチェックすることをお勧めします。また、66歳から小額でも毎月入金される年金は、ほぼ100%無税です。

 

頼みの綱の公認会計士は、税金申告を円滑にしてくるのが仕事で、個々のケースによって助言をしてくれるのは、実はまれです。公認会計士は数多く申告のサポートをしていますが、公認会計士の仕事は、顧客から提出された資料を正しく申告することです。申告書類に関しても、申告時は申告当事者本人が署名しますから、すべての責任は、会計士ではなく申告当事者になります。

もう1つの鍵は、税金申告で還付できる寄付や税金対策資料は、12月末までが期限です。いかに税金還付を考えても、新年になってからでは、前年度分の還付の方法はなく、会計士は唯一IRAをするかどうかを考えてくれるしか、できません。時には顧客からIRAの質問がなければそのままスルーして申告することもあります。

今までの弊社の経験で、12月中に相談を受けて税金が戻るケースがよくあります。これは、年をまたぐ医療費や寄付についての考え方など、そしていかに判りやすく会計士に提出する資料を揃え、正しく申告をすることから税金を返していただくという考え方です。

私は、長い間日系企業の総務課にいて、米国の給料と日本の給料、日本での税金と米国の税金が二重にならないよう、企業負担分の節税は会社の大きな経費対策でした。その後、2つの国の勤務、二重国籍からの税金申告など様々なケースがあり、インドのように米国収入に対して米国とインドと二重に収入税を支払う義務の国もありったりします。

米国内だけでなく、外国の持ち家やアパートの維持、米国内に住んでいる年間日数なども税金還付に関わる場合があります。米国コンドミニアムなどの場合は、もっと複雑に税金申告がありますから、親身になってくれるよい会計士を探すことは、大切です。もちろん、不動産の売買の専門家は、税金申告をよく熟知しているはずです。私は、自分の経験もありますから、収入とローンと税金の関係でどのような節税が出来るかプランを立ててからの購入をお勧めしています。

現在、私が一緒に仕事をしている公認会計士は、2008年から一緒にいろいろな仕事をしています。彼は腕のよい誠実な公認会計士ですが、それだけではなく、外国籍、起業者、多くの違った職業の人たちと関わっています。私は、彼から学んだことを多くの方に説明し、安心して申告するお手伝いと 正しい税金の考え方を毎年お話ししています。

多くの税金セミナーや説明会では、一般的なことしか話せません、個々の事情を把握できないと細かく説明はできないと考えます。誰もが同じような生活、職業ではありません。個別にお話をうかがって、その家族やその人のできる限りの方法で節税をお話し専門家の公認会計士へよりよい資料を手渡しできる方法を一緒に模索するしか方法がないと思うのです。

政治が代わるたびに、税法が変わります。それは、税金を支払う側にとってとても厳しく変わってきています。それでも、専門職(アーテスト、スタイリスト)、個人経営者などは、長く米国に住み続ける以上、避けて通れません。

この国では、米国人との婚姻、または永住権保持者との婚姻で永住権を申請をする場合、婚姻による永住が正当であったも、税金を納めていない、または、何らかの理由で低い所得申告をしていたがために、経済力のない婚姻との理由から永住権が却下されるケースがあります。思いもよらないことにならないよう、気をつけましょう。

また、申告は、決して税金を取られるだけのイベントではありません。多く支払った税金は戻ってきますので、毎年怠ることなく行いましょう。